「しあわせの家」について考えてみましょう!(その4)

  • 投稿日:2017年 4月30日
  • テーマ:住まい

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麗澤大学経済学部教授 清水千弘より

「しあわせの家」を実現するような住宅産業のあり方を真剣に議論しよう

住宅市場には多くの産業や専門家が関わっています。生産をする人、設計をする人、それを売る人、ローンを貸す人、中古流通をさせる人、住宅情報を流通させる人、リノベーションをする人、価格を決定する人、滞りなく決済をする人など実に多くの方々が関わります。日本の中でも巨大産業の一つといっても良いのです。

現在の住宅産業は、人口が増加し、経済が成長をし、住宅が不足している時代に作られたビジネスモデルの延長線上にあります。また、最近では中古住宅の流通シス テムを考えるにあたり、米国のビジネスモデルに注目する動きが出てきています。しかし、米国は依然として人口が増加しているために需要が供給よりも強く、空き家の増加が象徴しているようにそれが逆転してしまっている日本とはある意味違う市場を比較しているといえます。そうすると、そのビジネスモデル、産業を比較しようとしてもあまり意味がないのです。そもそも米国で家を買った人たちは、日本人よりも効用が上昇しているのか、「しあわせ」になっているのか、ということを考えないといけません。部分的なものを見るのではなく、根本的な部分を比較しなければならないのです。

住宅産業に関わる人たちは「しあわせの家」を提供し続ける主体でない限り、市場から淘汰されてしまうと考えた方が良い。資産価格がそれほど大切ではないという立場に立てば、住宅の資産価値を決める専門家は不要ということになる。中古流通をさせる人は、家が不足している時代には「売り手」主体にビジネスを考 えていれば良かったかもしれないが、空き家が多くなるなかでは、売り手が弱い立場となり、買い手主体でのビジネスモデルへと転換していかなければならりません。地域の中にある家を守り続けるような地域に密着した地場産業への発展かもしれないし、一層進化するIT技術に基づいた住宅流通のさせ方を全く変化させ てしまうような産業へと変革していくかもしれません。住宅市場を変革・再生させるような、「新産業」の登場が必要になってくるものと考えられます。

現在の住宅市場では、まだまだ多くの人たちが、住宅を買うことで不幸になってしまっています。
「しあわせの家」を実現するような住宅産業のあり方を従来の既得権益や規制を超えて、真剣に議論をし、実践していく時代に突入しているものと考えるのです。

終わり



「しあわせの家」について考えてみましょう!(その3)

  • 投稿日:2017年 4月29日
  • テーマ:住まい

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麗澤大学経済学部教授 清水千弘より

どのように「しあわせの家」を手に入れるのか?

このように整理 してみると「家をどうして買うのか」という問いに対して、私たちは広い意味で効用・利得を得る、つまり「しあわせ」になるために家を買うと定義しても良いのです。そのためには、現在の日本においては、資産価値の変動から解放されることが何よりも重要であり、住まうことによって得られる効用または利得が重要になってきます。とすると、その空間と時間を特に誰とどのように共有するのか、といった問題を重視しないといけない。一人で過ごすのか、他人と時間と空間を シェアして過ごすのか(シェアハウス)、家族と過ごすのか、どのように過ごすのかといったことを明確に定義した上で、人と家とをマッチングしていかなけれ ばなりません。

そのマッチングにおいては,科学技術の進化は人々の消費行動を変化させて(IT技術による住宅市場の変化)、そこに介在する専門家のあり方をも変化させます(住宅市場の専門家の役割)。
さらには住宅の中で過ごした時間から得られる効用を最大にしようとすると、その家の中に住む人、家族の変化に応じて家もまた変わっていかなければなりません。家に要求される性能は、そこに住む人たちによって変化するためである。そしてそこに住む人たちも、子供は成長し、大人も一年ずつ年をとり、その変化に 応じて「しあわせ」に住むための家の条件が変化していくことになります。「家」と「住まう人たち」との間に不一致が存在する場合には、それを修正していかなけ ればならなくなります。いわゆる「リノベーション」が必要になってくるのです。リノベーションとは、単に建物をリノベーションする・汚い部分を綺麗にするという のではなく、新しい思い出を描くためのキャンバスを作り直す、といった方が正確であると考えています。

続く・・・



「しあわせの家」について考えてみましょう!(その2)

  • 投稿日:2017年 4月28日
  • テーマ:住まい

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麗澤大学経済学部教授 清水千弘より

「家を買って幸せになる人と不幸になる人」

もう少し投資について深く考えてみましょう。
投資から得られる利得は投資期間中に発生するキャッシュフロー、つまり家賃収入と(価格が上昇していれば)売却時に得られる売却益から構成されます。そうす ると、たとえ価格が下落し、売却益がマイナスであったとしても、投資期間中の家賃収入の合計が売却損よりも上回っていれば、投資の利得はプラスだということが出来ます。

これを自分で利用するということで考えれば、キャッシュフローは住宅に住むことによって得られる「満足度」「しあわせ度」となる。住むことによって得られ た「しあわせ度」の合計がゼロのような人は(またはそのようなしあわせを重視しないで購入したような人は)購入後に発生する建物の「経年減価」やマクロ環 境の変化に伴う資産価値の変動によって「利得」が負になってしまう確率が高くなります。

逆に経年減価や人口減少などに伴うマクロ的な価格下落が発生したとしても、住むことの「しあわせ度」が十分に大きければ、そのような住宅投資によって利得を得ることが出来るのです。

そう考えるといくら経年減価が発生しようとも、価格が下落局面にあったとしても、住むことで「しあわせ」であれば投資をすればいいのです。
もし、資産価格の上昇だけが住宅を購入することの利得であるとすれば、今の日本では経年減価率が大きく、マクロ的には大きく上昇することがないため、家を買った人は不幸になってしまうでしょう。
またこのようなことに焦点を当てて政策立案をしようとすると、経年減価率を小さくしようとか資産価値が落ちないようにしようといったことが論点の中心にな る。(※この問題に関しては今後、「日本の住宅の寿命」、または「2040年の住宅価格」といったところでわたしの研究に基づきその成果の一部を紹介した い。)

このような視点に立ったときに、どのタイミングで住宅を買うべきかということは、経済的な基準以外の判断軸が大切となってきます。この問題に関しては、経済学では使用者費用という問題となります。この問題に関する研究成果は、後日「住宅の買い時」といった課題のもとで整理します。

続く・・・



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