二・二六事件 引き裂かれた刻を越えて
「2.26事件」とは、陸軍皇道派青年将校によるクーデター事件。
1936年(昭和11)2月26日早暁、歩兵第一・第三連隊、
近衛(このえ)歩兵第三連隊など約1500人の在京部隊が、
首相・蔵相官邸、警視庁はじめ、政府首脳や重臣の官・私邸、朝日新聞社などを襲撃した。
岩手に係る人物といえば齋藤實内大臣が殺害されておりますので、
私も多少関心があり斎藤實記念館を訪問したことがあります。
しかし皇道派と統制派の陸軍内抗争であること位の知識しか持ち得ておりませんでした。
昨年あることがきっかけで寺島英弥さんとご縁ができ、
著書「二・二六事件 引き裂かれた刻を越えて」を贈っていただきましたので、
今回拝読しました。
この本は二・二六事件で銃殺された津軽出身の青年将校・対馬勝雄とその妹たまのドキュメンタリーになります。
この本では青年将校の過激な言動に至るまでの、その当時の社会状況が克明に書かれております。
私たちの住む東北は、古代から常に中央から搾取される立場にあります。
貧しい農村に暮らす青年勝雄が、家族を養うために勉学し軍人を目指し這い上がっていく姿に、
故郷を思う純粋さが伝わってきます。その純粋さ故に蹶起した勝雄。
青年将校たちは、東京陸軍軍法会議で、弁護人なし、非公開、上告なし
という裁判を受け、その真実を語ることも許されませんでした。80余年
の時を超えて、その真実が明らかになります。
私たち東北人は今現在も、東日本大震災、福島原発、過疎と苦しめられ
ておりますが、次第に憤ることもなくなっているように思えます。
対馬勝雄青年の「私憤」なき「公憤」は、今の時代にこそ必要なもの
だといえます。
石川シュウジ