貸家の着工数が急増。その背景とは?

  • 投稿日:2017年 8月17日
  • テーマ:住まい

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国土交通省が2017年1月31日に発表した2016年建築着工統計調査によると、新たに住宅を着工した件数を表わす「新設住宅着工戸数」が、前年に比べて6.4%増の96万7,237戸を記録した。2年連続の増加で、2013年の98万25戸以来、3年ぶりの高水準。
この内訳をみると、賃貸を目的としてアパートやマンションを建設する「貸家」は41万8,543戸で、前年比10.5%増と大きく伸び、着工戸数全体を押し上げる結果となった。貸家が40万戸を超えるのは、2008年の46万4,851戸以来、8年ぶりである。

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貸家の新築着工戸数が伸びた背景の一つが、2015年1月に施行された相続税の改正である。
相続する財産のうち、相続する人数によって変わる非課税枠が、改正前の「5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)」から「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」へと縮小され、相続税の課税対象となる財産をもつ人の割合は、全国で約4%から6%台に広がるという財務省の試算もある。

そんな相続税の節税に有効とされる一つの方法が「賃貸経営」である。
最近は知られるようになったが、遺族が相続する場合に、相続税や贈与税の計算を行う際の基準となる「相続税評価額」が、現金や株をそのまま残すよりも低い実勢価格で評価される不動産の方が節税効果が高い。さらに、貸家の場合は借家人が住んでいて売買に制約を受けることから、さらに評価額が下がる仕組みとなっている。

貸家が増えている背景には、相続税の影響の他にも、低金利の長期化も要因の一つとして挙げられる。日銀によるマイナス金利政策によって、賃貸住宅の建築や購入のための融資商品である"アパートローン"は、持家を取得する場合の住宅ローン同様に金利の低下傾向が続いている。

また、土地所有者が建てたアパートを、建設事業者が長期間にわたって一括で借り上げ、一定期間の賃料保証をする「サブリース」も貸家が増加する要因の一つである。借り上げ期間は30年など長期に渡るものの、保証される家賃の固定期間は建設当初から1~2年ごとに状況を見て改定するという契約内容になっているケースがほとんどだ。
新築時には入居者を確保できたとしても、時間とともに空室は増える傾向がある。その結果、土地所有者に約束していたはずの家賃収入を建設事業者側が大幅に減額したり、契約を解除するなどして訴訟に発展するケースも決して少なくないという。

では、貸家住宅の建築は、どの地域で伸びているのだろうか。
地域別に前年比で比較すると、「首都圏」10.1%、「中部圏」9.6%、「近畿圏」9.5%、「その他の地方」11.5%と最も高い伸び率を示しており、都道府県別に見ても高い順に、「長野県」36.8%、「富山県」36.7%、「徳島県」32.4%、「福島県」30.7%、「新潟県」27.4%と、貸家が増加しているエリアは都市部だけではなく、地方圏でも数多く供給されていることが明らかだ。

昨今、空き家の増加が社会問題になっているのは周知の通り。
現在、住宅ストック数約6,060万戸に対し、総世帯数は約5,250万戸と空き家の数は820万戸に達している。
さらに、平成20年度における「貸用住宅の空き家率」の全国平均は18.8%と、
平成15年度と比較して1.2ポイント上昇している.
賃貸の着工を、"相続税対策"という側面にから攻めるビルダー。
空き家対策が後手に回る国の政策をなんとかしないといけない。


住宅ストック循環型社会の背景

  • 投稿日:2017年 8月16日
  • テーマ:住まい

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総務省の統計によると平成25年の住宅ストック数は約5200万戸
それに占める空き家は約820万戸存在し、その数空き家率13.5%とも
年々増加傾向にある。
この空き家の増加は、スクラップアンドビルドの新築中心の住宅市場の成れの果てでもある。


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そこで国は新築中心から中古住宅流通・リフォーム市場規模拡大へと転換してきた。
ところが、木造の一戸建ての住宅の場合、築後20年から25年で市場価値がゼロと
なる日本特有の住宅評価方法があります。その影響で住宅所有者が適切な維持管理を行うという
インセンティブが働いてこなかったのです。
居住可能なものでも住宅ストックの質が高いとはいえないのが現状です。
消費者からみると中古住宅の室に対する不安もあり、
本格的な住宅ストック循環型社会の実現には課題が多く残る訳です。

国は中古住宅流通を促す市場の環境整備の一つとして
既存住宅インスペクション・ガイドラインを策定し消費者の
不安を解消しようとしているのです。

昔より苦しくなっている!? 若い世代の住宅事情

  • 投稿日:2017年 8月15日
  • テーマ:住まい

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総務省「全国消費実態調査」より

我が家の東京に暮らす長男はこのお盆休みに帰省しなかった。帰るお金が無いという。
親が負担すると言えば「もうこれ以上迷惑かけられない」と返す。
息子の話を聞くと、「家賃の負担が重くて生活に余裕がない」
「食費や洋服代を節約しているのに、ぜんぜん貯蓄なんてできない」などと言う。
これはいったいどういうことなのだろうかと親として心配になる。
総務省が5年ごとに実施している「全国消費実態調査」の結果なるものを見つけた。

最新のデータは2014年に調査が行われたものだが、
その中でとくに「30歳未満の勤労単身世帯」の集計結果だけをみる。
大半は「親元を離れて仕事をしている20歳代の独身男女」と考えられる。

1か月平均の消費支出における費用項目ごとの割合(内訳)を表したのが上のグラフ。
(女性の統計もあるが今回は男性をみる)

男性では1970年代前半に5%未満だった住居費負担が、
2014年には25%と5倍以上に増大している。(女性も同様の傾向)

住居費負担の割合が増加する一方で、以前に比べて大きく減ったのが男女とも「食料」と「被服及び履物」。
「食料」の割合は1974年に男性の4割超、いまは2割前後。

それでは、住居費負担がこれほど増大しているのはなぜだろうか。
その要因のひとつは、賃貸住宅のグレードアップに伴う家賃の上昇である。
1970年代には大都市圏でも「風呂なし、共同トイレ、4畳半1間」の木造アパートがごく一般的。
それがやがて「3点ユニットのワンルーム」に置き換わり、
近年は単身者向けでも「バス・トイレ別の1Kや1DK」が多い。

部屋の間取りもだんだん広くなるとともに、RC造やSRC造の賃貸マンションの割合が増えている。
もちろん、住宅の性能や居住性が高まるのは歓迎すべきことなのだが、
それに伴う賃料水準の上昇に、収入の増加が追いついていないのは大きな問題である。
また晩婚化も大きく影響しているようだ。
かつては20歳代で結婚するケースも多く、早々に「30歳未満の勤労単身世帯」の
集計対象からは外れていたのである。
いずれにしても住居費負担が若い息子世代の生活を圧迫し、
その他の消費に回らないことは経済面でもマイナスになる。
住宅市場の将来を支えるべき若い世代が、毎月の家賃負担で疲弊している状態は問題である。
益々結婚できない状況に追いやられている。
国や自治体による支援策は「住宅購入・取得」に偏りがちだが、
もっと幅広く対策を講じていくことも必要だと思う。
中古住宅をリノベしてのシェアハウス、
つまり昔の長屋スタイルを好む若者もいる。

息子よ地元北上で働け!


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